WISC:FRI(流動性推理)が低い子への通級指導|新奇場面につなげる指導【FRI編④】

WISCを活かした指導

こんにちは‼️
通級担当として、10年以上・100人以上の指導歴がある「ねこもみじ」です🙂

FRIシリーズもいよいよ④まで来ました!
ここまで読んでくださっている方、ほんとにありがとうございます✨️
書いている側としても、回を追うごとに「これは伝えたい」が溜まっていく感覚があります。
そういう思いが湧き上がってくる感覚。
これって嬉しいです🙂

前回までの【FRI編②】【FRI編③】では、「教科学習につなげる指導」をお話ししました。
今回からは、もう一つの目的——「新奇場面につなげる指導」に入ります。

【FRI編①】で、FRIが低い子は「初めての問題や応用問題を解く力が弱い」とお話ししました。
これ、勉強だけの話じゃないんです。
初めての場面、初めての役割、初めての行事——そういう「新奇場面」でも、固まったり、過度に緊張したりする姿として現れます。

本記事を読むことで、

FRI(流動性推理)が低い子が、新奇場面(初めての場面)で適切に行動できるようになるには、どんな指導をすればいいのか?

が分かります。

結論から言うと、FRI(流動性推理)が低い子を新奇場面で適切に動けるようにするには、
 ①SST絵カードで「初めての・予期せぬ対人場面」に対応する力を育てること
 ②行事や新しい役割は、事前に具体的な目標を立てて見通しを持たせること
この2つが基本です。
本記事では、その2つの進め方と、本番前後の振り返り、担任・家庭との連携までを具体例つきで紹介します。

では、内容に入っていきましょう!

私の「新奇場面につなげる指導」には、2つの方法があります。

  • ①SST絵カードでの場面学習 状況理解・感情理解・適切な対応を、絵カードを通じて学ぶ指導です。「友達とのトラブル」のような、初めての・予期せぬ対人場面に対応する力につなげることが目的です。
  • ②行事・役割の事前準備 運動会や発表会、委員会・クラブの新しい役割など、実際にこれから起こる新奇場面に向けて、具体的な目標を立てて見通しを持たせる指導です。

①が「絵カードという疑似場面で練習する」のに対して、②は「現実に来る本番に向けて準備する」。
この2つを、その子の実態に合わせて使い分けたり、組み合わせたりしています。

それぞれ、具体的に見ていきましょう。

どんな教材か

私が愛用しているのは、エスコアールの「SST絵カード」です。
(教材の詳細・選び方は【FRI編⑤】(近日公開予定)でお話しします。ここでは進め方を中心に)

1回の指導で使うのは、1セット3枚 × 2〜3セット、時間にして3〜5分くらい。
3枚で1つのストーリー(状況→トラブル→解決)になっているものを使います。

進め方:3枚の流れ

基本の流れは、こうです。

【1枚目:状況提示】
・まず1枚目を見せる
・「これが男の子です。これは友だちです。状況を説明してください」と教示する
・子どもがいろいろと説明後、「(他には)ありません」などと言うまで聞く
・その後、「男の子の表情は?」「場所はどこですか?」など、感情理解・状況理解につながる補足質問をする

【2枚目:トラブル発生】
・次に2枚目を見せる
・「こうなりました。男の子は何て言ってる?」と尋ねる
・そこから、「友だちは?」「男の子の表情は?」「何で怒ってるの?」「友だちの表情は?」「何で怒ってるの?」と、両者の言動・表情・理由を一つずつ尋ねる
・そして、「このままだと2人はどうなりそう?」「良くないのはどっち?」と、因果と善悪を尋ねる

【1枚目に戻る→3枚目:解決】
・もう一度1枚目を見せる
・「じゃあ、こういう時…」と言いながら3枚目を見せる
・「男の子はどうすれば/どう伝えれば/どう考えれば良かった?」と尋ねる

つまり、「状況理解 → トラブルの因果・感情理解 → 適切な対応の発見」という流れで指導しています。

声かけ:子どもに「気づかせる」

ここが、【FRI編②】の算数系の指導とは少し違うところです。

②では、当てずっぽうだと思われる言動に対して「それは考えていることになりません。真面目にやりましょう」とはっきり線引きする、という話をしました。
でも、SST絵カードでは、私ははっきりした線引きはしていません
代わりに、追加質問を重ねて、その子自身に気づかせていくスタンスです。

絵カードは「正解を当てる」課題ではなく、「一緒に考える」課題だからです。
「表情は?」「何で怒ってるの?」「このままだとどうなる?」といった問いを足していくことで、見えていなかった視点に子ども自身がたどり着く。
このプロセスそのものが、新奇の対人場面で「立ち止まって考える」練習になっています。

絵カードが「疑似場面の練習」なら、こちらは「これから本当に来る新奇場面」への準備です。
運動会、発表会や音楽会、委員会・クラブの新しい役割など。
こうした行事や役割は、FRIが低い子にとって、まさに「初めての・見通しの持ちにくい場面」。
だからこそ、事前に具体的な目標を立てて、見通しを持たせるんです。

具体例として、ある子の運動会前の目標設定を紹介します。

やること——行事を分解して、場面ごとに具体目標

まず、行事をプログラムに沿って時系列に分解します。
例えば、「開会式→ラジオ体操→応援合戦→玉入れ→つな引き→リレー→ダンス→閉会式」みたいに。
そして、その中から「本番で実行する」具体的で観察できる目標を、子どもと一緒に立てます。
実際に子どもと一緒に設定した目標を以下に挙げましょう。

  • ① 立つ時は”気をつけ”で止まる(※全体を通しての目標)
  • ② ひじやひざを伸ばして動く(※ラジオ体操の目標)
  • ③ 応援合戦で大きな声を出す(※応援合戦の目標)
  • ④ 先生の声・指示を聞いてレーンに行く(※リレーの目標)
  • ⑤ ダンスで大きな声を出す(※ダンスの目標)

ポイントは、「頑張る」みたいな曖昧な目標にしないこと
頑張るって、目標じゃないからね笑
「立つ時は気をつけで止まる」「ひじやひざを伸ばして動く」。
こうやって、何をするかを具体的な”行動”に落とすんです。
行動が具体的だから、本番で実行できる。
本番後に「できたか」も確認できる。

この目標は私が一方的に決めるのではありません。
子どもが話した内容を、私が要約したり、整理したり、時には提案したりしながら、一緒に作っていきます。
この指導、学級適応にめっちゃめちゃ効果があります‼️
断言できる。
でも…
難しい笑
今後、実際の板書写真なども見せながら、もっと具体的に伝えていけたらなって思ってます。

担任と共有して、本番前後で使ってもらう

立てた目標は、書いて終わりにしません。

放課後に担任の先生と共有します。
その際、目標を書いた板書写真を印刷して渡します。
なぜか?
担任には、本番までに本人と一緒に目標を確認してもらったり、本番後に「実行できたか」を尋ねてもらったりするからです。
その時に板書写真を活用してもらうわけですね。
通級の指導が、担任を通じて学級・本番の場面までつながっていくわけです。
これが、通級と学級の連携、ですね。

本番後——振り返りで価値づけ、日常へつなげる

そして本番が終わったら、振り返りをします。
立てた目標を見ながら、子ども自身が目標を実行できたかどうか、一つずつ自己評価します。

ここで私は、できたことをしっかり価値づけます。
いかにその子が喜ぶ褒めや褒め方ができるか、ってことですね。
通級担当として・教師として、あなたの力量が試される場面ですね🙂

そして最後に。
「運動会で見せた成長を、ふだんの学校生活に活かしていこう」
「来週、クラスで何をがんばるか、目標を考えよう」
こうつなげます。
行事で終わらせない。
新奇場面で発揮できた力を、日常の学校生活へ般化させていく
ここまでが、ワンセットです。

新奇場面系の指導を続けていると、こんな変化が見えてきます。

  • 初めての場面・行事で、固まらなくなる。過度に緊張しなくなる
  • 見通しを持って動けるようになる(担任から「指示を聞いて動けてた」といったエピソードが出てくる)
  • 振り返りで、自分の行動を順序立てて説明できるようになる
  • 絵カードで、適切な対応を自分から出せるようになる

そしてもう一つ。
この指導を繰り返すほど、その子自身の目標設定が上手くなっていきます
最初は私が要約・提案して作っていた目標を、だんだん自分で具体的に立てられるようになる。
すると、適切な行動がどんどん増えていくんです。
これは見ていて本当に嬉しい変化です。

効果が「見えやすい」

【FRI編②】【FRI編③】では「算数の効果は半年〜1年、見えにくい」とお話ししました。
でも、新奇場面系は逆で、効果が見えやすいです。

理由はシンプルで、目標が”行動”だから
行事で立てた目標を実行しているか=行動しているかどうか。
行動は目に見えます。
だから、本人も担任も保護者も、効果を感じやすいんです。

担任には、先ほどの「目標を共有して本番前後で使ってもらう」流れ自体が、そのまま「通級で何をやっているか」を伝える手段にもなります。

保護者には3つの場面で関わってもらう

言い方は失礼ですが…
家庭でもちゃんと関わってくれる保護者には、踏み込んで協力をお願いします。
お願いするのは、前日夜・当日朝・帰宅後の3つの場面での関わりです。

  1. (前日夜・当日朝)目標を尋ねる → 言えたら褒める。言えなかったら、一緒に確認する
  2. (帰宅後)実行できたかどうかを尋ねる
  3. 目標を覚えていたこと意識できたこと実行できたことを褒める

板書写真を保護者にも渡すことで、家庭での支援にもつなげることができます。
通級・学級・家庭の3者で、同じ目標を、同じ方向から支える。
シンプルだけど、めっちゃ効きます。

Q. SST絵カードは、どんなふうに使えばいいですか?

1枚目で状況と感情を説明させ、2枚目でトラブルの因果・善悪を整理し、3枚目で「どうすれば良かったか」を子ども自身に引き出させます。
1セット3枚×2〜3セット、3〜5分が目安です。

Q. 「行事の事前準備」は、具体的に何をするんですか?

行事をプログラム順に分解し、その中から「本番で実行する」具体的で観察できる目標を、子どもと一緒に立てます。
「頑張る」ではなく「立つ時は気をつけで止まる」のように行動に落とすのがコツです。
本番後には同じ目標で振り返り、できたことを価値づけ、日常生活へ般化させます。
とは言っても、イメージしにくいですよね…笑
今後、私がやっている指導を通級ラボで紹介していけたらなって考えています。

Q. 新奇場面系の指導は、効果が出るまで時間がかかりますか?

教科学習系(算数)に比べると、明らかに効果は見えやすいです。
目標が「行動」なので、実行できたかどうかが目に見えるからです。
さらに、続けるほど子ども自身の目標設定が上手くなり、適切な行動が増えていきます。

Q. 家庭にはどんな協力をお願いすればいいですか?

関係性があり、家庭でも関わってくれる保護者には、前日夜・当日朝・帰宅後の3つの場面で関わってもらいます。
目標を尋ねる→言えたら褒める/言えなければ一緒に確認→帰宅後に実行できたか尋ねる→覚えていたこと・意識できたこと・実行できたことを褒める、という流れです。

今回は、FRI(流動性推理)が低い子への「新奇場面につなげる指導」をお話ししました。

方法は2つ。

  • ①SST絵カードでの場面学習:状況→因果→対応の発見。追加質問で子どもに気づかせる
  • ②行事・役割の事前準備:行事を分解して具体目標を立て、本番で実行、振り返りで価値づけ、日常へ般化

教科学習系と違って、効果が見えやすいのがこの指導の良いところ。
そして、続けるほど子ども自身が目標を立てられるようになり、適切な行動が増えていく。

行事は「初めての・見通しの持ちにくい場面」。
でも、準備して、実行して、振り返る。
このサイクルを回すことで、その子は確かに育っていきます。

次回【FRI編⑤】(近日公開予定)では、この指導で使っている教材(SST絵カードなど)を紹介します。

大丈夫!
一緒に頑張っていきましょう😊

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