通級の「算数」指導|筆算は教えない。でも、位取りと九九は教える【実際の指導編㉙】

実際の指導

こんにちは‼️
通級担当として、10年以上・のべ300人以上の指導歴がある「ねこもみじ」です🙂

この記事を書いているのは8月の終盤。
子ども達にとっては「もうすぐ夏休みが終わる〜💦」という感じでしょうね。
宿題をやってなかった子たちはだんだんと焦ってくる時期でしょうか笑
私も昔を思い出しますねぇ⋯😂

さてさて⋯。
前回の㉘「見て記憶」の指導パーツでは、主に「神経衰弱」で見て覚える力を育てる話をしました。
今回からはガラッと話の内容が変わりますよ!
ズバリ、「算数」です☝️

ただ、いきなり教材や進め方の話はしません。
その前に、前提をそろえておいた方がいいな、と考えたからです。
その前提とは何か?
それは⋯
「通級で算数をやっていいのか?」
という、そもそもの話です。

そして⋯
「通級で算数をやるとしたら、どこまでを指導するのか?」
という線引きです。

本記事を読むことで、

通級の「算数」指導は、どこまでやるのか?

が分かります。

結論から言うと、私が通級で指導しているのは「数処理」「数概念」「数的事実」の3つです。
筆算は教えません。
でも、位取りと九九は教えます。

はぁ⋯???
というあなたの顔が浮かんでくるようです笑
ちゃんと説明するから大丈夫ですよ〜💡

では、内容に入っていきましょう!

こんな実態があるなら、この指導を入れます

私が算数を指導パーツに入れるのは、こういう時です。

  • 担任から「算数の授業で困っている」というエピソードが出てきた
  • 担任から「まだ指計算をやっていて……」と相談があった
  • 保護者から「何回教えても繰り下がりが理解できなくて……」と言われた

通級での指導は、「今日指導するのは教科書の◯ページか⋯じゃあ、こういう内容だな」みたいな教科指導とは違いますね
担任や保護者などの関係者から届く困りごとが入口になることが多いですね。

算数系で特に多いのが、「指計算」「繰り下がり」でしょうか。
この2つは、担任や保護者にとって目に見えやすい。
だから、相談として上がってきやすいんでしょうね。

そもそも、通級で「算数」を教えていいのか?

これ、そもそもですけど、難しい問いなのでは?
あなたは、通級で「算数」を指導することに対して、ズバッと自分の考えを答えられますか?

「通級で、算数を教えていいのですか?」

はい、どうですか?
ズバッと答えられますか?
結構、難しいでしょう笑?

ご存じの通り、通級による指導の内容は自立活動が基本です。
教科の補充指導は、「特に必要がある時」に限られています。
(※この点に対して、私なりの意見や反論があるのですが笑、これはまた別の記事に書こうかな)

ねこもみじ
ねこもみじ

じゃあ、算数はやったらダメなの?
……という話ではないんです。

私の答えはこうです。
「算数」とひとまとめにするから、迷うんです。

算数の力は、いくつかの層に分かれています。
その層を分けて見ると、通級でどの部分に対して指導するのか、の線引きができます。

算数の力は、4つに分かれている

算数のつまずきを整理した枠組みとして、熊谷恵子先生の分類があります。
算数障害を、次の4つに分けたものです。

  • 数処理
  • 数概念
  • 計算
  • 文章題

私はこれを、こう捉えています。

算数科の力の土台には、数処理と数概念がある。
その土台の上に、計算・図形・文章題の力がある。

土台と、その上。
ここが分かれているのが大事なところです。

そして、この分け方には、もうひとつ重要な線があります。
いつ育つ力なのか、という線です。

  • 就学までに獲得する……数処理・数概念
  • 就学後に学習する……計算・図形・文章題

つまり、数処理と数概念は、小学校で算数科を習い始める”前”に育っているはずの力ということです。

「数処理」と「数概念」は、就学までに育つ力

言葉が硬いね笑
なので、中身をもうちょっと具体的に見ていきましょう。

数処理=数字・数詞・数量をつなぐ

数処理は、3つのものを行き来する力です。

  • 数字……「5」という記号
  • 数詞……「ご」という読み
  • 数量……●●●●● という実際の量

「5」を見て「ご」と読める。
「ご」と言われて●を5つ出せる。
●が5つあるのを見て「5」と書ける。

この行き来が、数処理です。
大人には当たり前すぎて、力だと気づきにくい部分ですね。

数概念=5と10のまとまりで見る

数概念は、数を「まとまり」として捉える力です。

たとえば、ブロックが縦に並んでいるとします。
それを見て、パッと「6」と答えられるか。

ここで、下から「1、2、3……」と順番に数えている子がいます。
答えは合っています。
でも、まとまりで見えてはいません。

5のまとまりが見えていれば、「5と1で6」と一瞬で答えられます。
これが数概念です。(※数概念をとても簡単に説明しています。本当はもっと説明が必要です💦)

そして、この力が育っていないと、そのあとが全部しんどくなります。
10の合成・分解、繰り上がり、繰り下がり。
全部、数概念の上に乗っている力だからです。

ねこもみじ
ねこもみじ

「答えが合っているか」だけを見ていると、見落としがち💦
どう数えているかを見てください☝️

だから私は、数処理・数概念を「教科の補充」とは考えていません

ここまでを踏まえると、私の判断はこうなります。

数処理・数概念は、算数科の学習内容の”前”にある力。
だから、教科の補充には該当しない。

小学校で習う算数の内容を、先取りしたり、もう一度なぞったりしているわけではありません。
その手前にある、土台の力を育てているという整理です。

この考え方は、私が勝手に言っているわけではありません。
「就学までに獲得する力=数処理・数概念」という線と、そのまま一致しています。

ただ──

ねこもみじ
ねこもみじ

ここは、通級担当によって判断が分かれるところかもしれません。
私はこう整理している、という話です💦

自分の考えを押しつけるつもりはありません。
ただ、線引きせずに「算数の指導をしています」と言うより、どこを・なぜやるのかを説明できるほうが、担任にも保護者にも理解してもらいやすいとは思います。

「計算」も、2つに分かれる

さて、ここからがもう一段ややこしい話です💦

さきほどの数処理・数概念・計算・文章題の4分類のうち、「計算」
私は、この計算の部分も指導しています。

「あれ、計算は就学後の学習内容じゃないの? さっき言ってた説明と違うやん💢」
えっと⋯その通りです😓
だから、ここにもう一本、線を引く必要があります。

計算は、性質の違う2つに分かれます。

  • 数的事実……1桁レベルで、暗算でできて、自動化するもの。(例:1桁のたし算、答えが1桁のひき算、九九、九九の裏返しのわり算)
  • 計算手続き……筆算のように、手順が多いもの

数的事実は、覚えて、すぐ取り出せるようにするもの。
計算手続きは、手順を身につけるもの。

同じ「計算」でも、育てるものが違います。
伝わりますか?

筆算は教えません

私は、通級で筆算の指導はしません。

理由はシンプルで、筆算は計算手続きだからです。
28+16をどう並べて、どこから足して、どこに繰り上げるか。
これは、算数科の学習内容そのものです。

ここに手を出すと、教科の補充になります。
そして、学級で教わっているやり方と通級のやり方がズレると、子どもが混乱します。

だから、やりません。
ここは、はっきりしています。
あなたはどうですか?
ここまで明確に線引きや説明ができていますか?

でも、位取りと九九は教えます

一方で、私が指導している「計算」があります。
それが、繰り上がり・繰り下がり九九、そして位取りです。

繰り上がり・繰り下がりは、1年生の内容

ここで言う繰り上がり・繰り下がりは、1ケタのことです。
8+7、15−8のような、暗算でやるもの。
1年生で学習する内容ですね。

なぜ重視するのか。
ここに、10の合成・分解が含まれているからです。

「10は、6といくつ?」
これが即答できるかどうかで、そのあとの算数の理解・定着に大きく差が出ます。

九九は「数的事実」

九九が未定着の場合も、指導します。

九九は、さきほどの分類でいうと完全に「数的事実」です。
手順を覚えるものではなく、自動化・記憶の問題。
筆算の手順指導とは、性質がまったく違います。

だから、私は通級で九九を教えます。

位取りは「数概念」の側

位取りについては、用語を正確にしておきます。

位取りは、数的事実ではありません。
数概念の側にあります。

「174は、100704」。
ではなくて⋯
「100が1こと、10が7こと、1が4こ」。
この見方ができるかどうか。

ここがあやふやなまま筆算に進むと、繰り上がりの「1」が何なのか分からないまま手順だけ覚えることにつながってしまいます。

位取りは数概念、九九は数的事実。
領域は違いますが、どちらも”算数科の手続き”ではなく”土台”の側にあります。
だから、私は教えます。

私が指導しているのは、この範囲です

ここまでの私なりの線引きを、まとめます。

指導する

  • 数処理……数字・数詞・数量をつなぐ
  • 数概念……5と10のまとまりで見る。合成・分解、位取り
  • 数的事実……1ケタの繰り上がり・繰り下がり、九九

指導しない

  • 計算手続き……筆算
  • 図形
  • 文章題(※ただし例外あり。FAQで触れます)

そして、この3つの中でいちばん重要なのは「数概念」です。
私が「算数」の指導パーツで一番時間を使っているのは、ここです。

具体的にどんな教材で、どう進めるのか。
それは次回書きますね☝️

なお、WISCの結果から算数につなげる話は、FRI編②「教科学習につなげる指導」FRI編③「オススメ教材3選」でも書いています。
検査結果から入りたい方は、そちらもどうぞ。

よくある質問(FAQ)

Q. 図形や文章題は指導しないんですか?

基本的には指導しません。
土台の力を優先しているからです。

ただし、文章題には例外があります。
数処理・数概念・計算の指導を2周やり終えて、「文章題まで指導した方がいい」という関係者の判断になれば、やります。
あくまで、土台が固まったあとの話ですね。

どんな教材を使うのかなどについては、別記事で書きますね。

Q. 家庭でやってもらうことはありますか?

特にありません。
宿題を出したり、家庭で練習をお願いしたりはしていません。
これは今までもお伝えしてきた通りですね。

まとめ

  • 通級の算数は、「算数」とひとまとめにするから迷う
    層に分けると線引きできる
  • 算数の力は数処理・数概念・計算・文章題の4つ。
    数処理と数概念は就学までに育つ土台
  • 計算は数的事実(1ケタ・九九=自動化)計算手続き(筆算)に分かれる
  • 私が指導するのは数処理・数概念・数的事実
    筆算は教えない。
    位取りと九九は教える

算数は、通級担当の中でも扱いが分かれるパーツではないでしょうか。
私も「これが正解だっ‼️」と言うつもりはありません。

ただ、どこを・なぜやるのかを自分の言葉で説明できると、担任の先生とも保護者とも話がしやすくなります。
この記事が、あなたの整理の材料になればうれしいです。

ねこもみじ
ねこもみじ

次回は、いよいよ中身。
数処理・数概念を、実際にどう指導しているかを書きます💪

大丈夫!
一緒に頑張っていきましょう😊

📖 実際の指導編シリーズ

  1. ① 指導をひとつに絞らない理由と考え方
  2. ② 45分を“指導パーツ”で組み立てる
  3. ③ 「目の運動」対面トレ編
  4. ④ 「目の運動」プリント編
  5. ⑤ 「運動」体幹・バランスから体育へ
  6. ⑥ 「手の運動」巧緻性・運筆・道具操作
  7. ⑦ 「音読」たくさん読ませる前にやること
  8. ⑧ 「言葉のきまり」特殊音節の指導
  9. ⑨ 「文字(仮名)」平仮名・カタカナを書かせず覚える
  10. ⑩ 「読み取ろう(読解)」聞かれたことに端的に答える
  11. ⑪ 「作文」5W1Hで文章を組み立てる
  12. ⑫ 「漢字」①読み・意味編
  13. ⑬ 「漢字」②形・書き編
  14. ⑭ 「漢字」③使い分け編
  15. ⑮ 「意味調べ」教科書の知らない言葉を調べる
  16. ⑯ 「ことわざ・慣用句」教える/教えないの線引き
  17. ⑰ 「スピーチ」結論→理由→まとめで話す
  18. ⑱ 「気持ち・社会性」SSTと般化の話
  19. ⑲ 「気持ち」ワークシート1枚の進め方
  20. ⑳ 「気持ち」ワークシート②「どこが」と「なぜ」
  21. ㉑ 「気持ち」絵カード編(教材の話)
  22. ㉒ 「気持ち」絵カード3枚の進め方
  23. ㉓ 「おしゃべり」①ワークシート編
  24. ㉔ 「おしゃべり」②実会話編
  25. ㉕ 「言葉(語彙)」プリント3枚で語彙を増やす
  26. ㉖ 「言葉のイメージ」言葉と言葉をつないで概念を育てる
  27. ㉗ 「よく見よう」点つなぎで見る力を育てる
  28. ㉘ 「見て記憶」神経衰弱で見て覚える力を育てる
  29. ㉙ 「算数」筆算は教えない。位取りと九九は教える(この記事)

困りごとから探す(逆引き)WISC完全ガイド実際の指導編・完全ガイド

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