こんにちは‼️
通級担当として、10年以上・のべ300人以上の指導歴がある「ねこもみじ」です🙂
前回の㉗「よく見よう」では、点つなぎで「見る力」を育てる話をしました。
今回は、見る力と関連がある指導です。
「見て記憶」という指導パーツです。
主に使うのは、トランプです。
ただ、この記事で書きたいことは「トランプを使って、子どもも楽しく取り組める!」という内容ではありません💦
「板書が写せない」という同じ困りごとの裏に、まったく別の3つの力があるという話です。
本記事を読むことで、
通級で「見て記憶」の指導を、どう進めればいいのか?
が分かります。
では、内容に入っていきましょう!
「見て記憶」で使う教材は、トランプ
まず教材の話から。
私が使っているのは、市販のシンプルなトランプです。
特別なものは要りません。
シンプルな方が、余計な視覚刺激がなく、子どもも注意を持続しやすいです。
やることは、神経衰弱。
それだけです😁
慣れてきたら、プリント教材も並行させます。
そちらはWISC編で紹介した「コグトレ」「ピグリ」を使っています。
ただ、始まりは大体トランプが多いですね☝️
こんな実態があるなら、この指導を入れます
私がこの指導を入れるのは、こういう子です。
- 板書を写すのに時間がかかる。黒板と手元を何度も往復する
- 一度に覚えられる量が少なく、1文字ずつ写している
- 教科書のどこを読んでいたか分からなくなる
この3つ、共通点が見えますか?
それは、こういうこと。
どれも、目を離したあと、元の場所に戻れない。
黒板から手元へ。
手元から黒板へ。
行から行へ。
見ている間は、ちゃんと見えている。
でも、目を離した瞬間に消える。
だから何度も見に行く。
学級で、こういう困難さとして出ていることが多いです。
「板書が写せない」の裏には、3つの力がある
「板書が写せない」という困りごとは、きっとあなたも経験したことがありますよね?
でも、その裏にある力は1つではありません。
目の運動 = 視機能(目を動かす力)
よく見よう = 視覚認知(見たものをとらえる力)
見て記憶 = 視覚的短期記憶(見たものを保っておく力)
③④「目の運動」は、目そのものを動かす力。
黒板から手元へ、視線をスムーズに移せるかどうか。
㉗「よく見よう」は、見たものをとらえる力。
形を見分けたり、位置関係をつかんだりする力です。
そして今回の「見て記憶」は、見たものを、数秒だけ保っておく力。
3つとも、外から見える困りごとは同じです。
「板書が写せない」。
でも、アプローチする先はまったく違います。
この違いを、まずは「知っている」「把握している」かどうか。
ここが、通級担当としての専門性になります☝️
見分けられない。だから、全部やる
じゃあ、どうやって見分けるのか。
正直に言いましょう。
見分けることは、難しいです。
おいっ!!
ってなりますよね笑
ここ、期待に沿えなくてすみません💦
「こうやって見分けます」と書けたら、きっと役に立つ記事になるんですけど⋯。
でも、実際そうなんです。
子どもの困難さは、たいてい複合的です。
目の動きも弱くて、とらえる力も弱くて、保つ力も弱い。
そういう子の方が多い。
だから私は、並行して指導しています。
これは①「指導をひとつに絞らない理由」で書いたことと、まったく同じ考え方です。
原因が絞れないなら、絞らずに全部やる。
その方がいろいろな困難さを総合的に軽減していくことになるので、その子のためになる。
もちろん、45分は有限です。
全部を毎回やれるわけではありません。
そのあたりの組み立ては②「45分をパーツで組み立てる」を見てください。
進め方──1回3〜5分。私と対戦します
では、実際の進め方です。
1回3〜5分。
短いです。
45分の中の1パーツなので、これくらいで切り上げます。
そして、必ず私と対戦します。
理由は単純で、そのほうが楽しいからです😁
勝ち負けを入れることで、子どもの力をより高めようとしているわけです。
難易度は4段階。「組数」と「ペア数」で刻む
神経衰弱の難易度は、2つの軸で調整します。
組数(何種類のカードを使うか)と、ペア数(同じカードを何枚ずつ置くか)です。
私は、この順で上げていきます。
- 6〜7組 × 2ペア(13組の半分程度。同じ数字が4枚ずつ)
- 13組 × 2ペア(種類を全部に増やす)
- 6〜7組 × 1ペア(同じ数字を2枚ずつに減らす)
- 13組 × 1ペア(ふつうの神経衰弱)
「2ペア」というのは、同じ数字が4枚ある状態のことです。
♠5・♥5・♦5・♣5、という具合ですね。
なぜ4枚から始めるのか。
そのほうが、当たりやすいからです。
めくって、当たる。
また当たる。この体験を先に作ります。
枚数を減らして簡単にするのではなく、当たる確率のほうを上げておく。
ここが工夫のしどころです。

一番下の段階は「絶対にできる」ところに置いています。
これは見て記憶に限らず、私の指導ぜんぶに共通していますね☝️
だから、「一番易しい段階でも当てられない子」は、私の経験上いません笑
そこは心配しなくて大丈夫です。
もうひとつの調整は、私の演技
教材の設定とは別に、私にはもう1つ調整の手段があります。
演技です。
子どもが取った枚数を見ながら、私が取ったり、わざと間違えたりします。
実際にはこんなことを言っています。
- 「え…これ出たよな〜…この辺にあったような…あー!!違ってたー!!」
- 「はい、ここです! あー!!違ってたー!!」
- 「え〜?これ〜?分からんわ〜」
当たり前ですが、ただふざけているわけではありません笑
その場でリアルタイムに難易度を調整しているんです。
カードの組数やペア数は、始める前に決めます。
でも、実際にやってみたら思ったより難しかった、ということはあります。
そのとき、途中で「じゃあカードを減らそうか」とは言いにくいですよね。
子どものプライドもあります。
だから、私が外す。そ
れで釣り合いを取ります。

万が一、一番易しい段階でつまずいても大丈夫。
こちらが演技すればいいだけですから😏
バレないんですか?
結論から言うと、バレたことはありません(と思っています笑)。
少なくとも、子どもが演技に気づいて指摘してきたり、怒ったりしたことは、これまで一度もありません。
のべ300人以上を指導してきて、一度も、です。
こちらが演技して、子どもが気持ちよく取り組んで、力を高めていく。
最高ですね✨️
プリントを足すのは「慣れてきたら」
指導を始めた頃は、神経衰弱が中心です。
慣れてきたら、プリント教材を並行させます。
イメージとしては、具体から抽象へ。
トランプは手で触れます。
めくる、取る、並べる。
全部が具体的です。
一方、プリントは紙の上の話。
見て、隠して、思い出して、書く。
抽象度が上がります。
教材と手順はWISC編・WMI編⑤に詳しく書いたので、そちらを見てください。
変化のサイン──増えるのではなく、「減る」
この指導の効果としては、どんなものがあるのか?
以下に挙げてみます。
- 当てずっぽうでめくることが減る
- 悩む時間が減る
- 連絡帳を書く時間が減る
- 問題文と選択肢を見比べる往復が減る
- 「もう1回見せて」と言う回数が減る
お気づきでしょうか。
ぜんぶ「減る」んです。
「テストの点が上がった」「漢字を覚えられるようになった」——そういう増える変化ではありません。
この指導の成果は、「やらなくてよくなったこと」として現れます。
往復しなくてよくなった。
聞き返さなくてよくなった。
悩まなくてよくなった。

そして、ここが厄介なところで……
減ったものは、目立たないんですよね💦
増えたものは分かりやすい。
テストの点数、覚えた漢字の数。
数えられます。
でも、減ったものは数えられません。
「今日は3回しか黒板を見なかった」なんて、誰も数えていない。
担任も、保護者も、本人も。
だから、この指導は効いていても気づかれにくい。
逆に言えば、私たち通級担当が見るべきポイントはそこです。
「できるようになったこと」を探すのではなく、「しなくなったこと」を見る。
専門的ですね〜✨️
何が効いたのかは、分かりません
見て記憶の指導の効果と、学級での適応。
この2つの関連が、明確には分からない。
これも私たち通級担当を悩ませる部分です💦
考えてみれば当たり前で、私は目の運動も、よく見ようも、見て記憶も、全部並行してやっています。板書が写せるようになったとして、どれが効いたのかは特定できません。
指導と効果が1対1で対応してくれたら、どんなに分かりやすいか。
通級で〇〇を指導しました→学級で△△という変化が見られました。
なんて説明がいつもできたら、どんだけ楽か⋯笑
でも、そうはならないことが多い。
あなたも分かるでしょう?
終わりの目安
この指導をいつ終了と判断するか。
私の判断基準は、関係者が「この指導の優先順位は高くない」と判断し始めたときです。
担任の先生や保護者の方が、他に優先したいことを挙げ始めたら、そこが切り替えどきですね。
「◯回できたら終わり」「◯枚できたら卒業」という基準は持っていません。
子どもの到達度で決めるのではなく、その子の今の優先順位で決める。
ここは他の指導パーツと同じです。
よくある質問(FAQ)
Q. 家庭でやってもらうことはありますか?
ありません。
強いて言うなら、「もし神経衰弱をやるなら、楽しみながらやってみてください」くらいでしょうか。
家庭に学習課題として持ち込むのは、私はおすすめしません。
家庭は、褒める場所であってほしいと思っています。
まとめ
- 「見て記憶」で使うのは、市販のトランプ。神経衰弱を1回3〜5分
- 難易度は4段階。組数とペア数で刻み、一番下は「絶対にできる」ところに置く
- もうひとつの調整は演技。子どもが取った枚数を見ながら、私が外す
- 「板書が写せない」の裏には3つの別々の力がある。見分けられないから、全部並行する
- 変化は「減る」形で現れる。目立たないけれど、そこを見る
目には見えないし、何が効いたのかも分からない。
正直、手応えのつかみにくい指導です。
でも、通級での指導ってこういうの多いですよね⋯。
だから、すぐに効果=学級適応が見えなくて、あなたも悩む・苦しむんでしょうが⋯。
でも、黒板と手元を往復し続けている子が、往復しなくてよくなる。
そういった変化は、確実にその子の毎日を楽にします。
見えにくい変化を見つけるのも、通級担当である私たちの仕事ですね💪
大丈夫!
一緒に頑張っていきましょう😊
📖 実際の指導編シリーズ
- ① 指導をひとつに絞らない理由と考え方
- ② 45分を“指導パーツ”で組み立てる
- ③ 「目の運動」対面トレ編
- ④ 「目の運動」プリント編
- ⑤ 「運動」体幹・バランスから体育へ
- ⑥ 「手の運動」巧緻性・運筆・道具操作
- ⑦ 「音読」たくさん読ませる前にやること
- ⑧ 「言葉のきまり」特殊音節の指導
- ⑨ 「文字(仮名)」平仮名・カタカナを書かせず覚える
- ⑩ 「読み取ろう(読解)」聞かれたことに端的に答える
- ⑪ 「作文」5W1Hで文章を組み立てる
- ⑫ 「漢字」①読み・意味編
- ⑬ 「漢字」②形・書き編
- ⑭ 「漢字」③使い分け編
- ⑮ 「意味調べ」教科書の知らない言葉を調べる
- ⑯ 「ことわざ・慣用句」教える/教えないの線引き
- ⑰ 「スピーチ」結論→理由→まとめで話す
- ⑱ 「気持ち・社会性」SSTと般化の話
- ⑲ 「気持ち」ワークシート1枚の進め方
- ⑳ 「気持ち」ワークシート②「どこが」と「なぜ」
- ㉑ 「気持ち」絵カード編(教材の話)
- ㉒ 「気持ち」絵カード3枚の進め方
- ㉓ 「おしゃべり」①ワークシート編
- ㉔ 「おしゃべり」②実会話編
- ㉕ 「言葉(語彙)」プリント3枚で語彙を増やす
- ㉖ 「言葉のイメージ」言葉と言葉をつないで概念を育てる
- ㉗ 「よく見よう」点つなぎで見る力を育てる
- ㉘ 「見て記憶」神経衰弱で見て覚える力を育てる(この記事)
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- 検査結果から入るなら →「WISC:WMI(ワーキングメモリー)の「絵のスパン」が低い子への通級指導【WMI編④】」
- 教材の話 →「WISC:WMI(ワーキングメモリー)の「絵のスパン」が低い子への通級指導|オススメ教材3選【WMI編⑤】」
- シリーズの全体像 →「通級の「実際の指導」とは?【実際の指導編・完全ガイド】」
- 筆者について →「プロフィール」


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