通級の「算数」指導③【位取りと九九】|位取りシートも九九表も、使いません【実際の指導編㉛】

実際の指導

こんにちは‼️
通級担当として、10年以上・のべ300人以上の指導歴がある「ねこもみじ」です🙂

算数の指導パーツ、第3弾です。
前回の㉚「算数」指導②【数概念】では、答えが合っていても数え方を見る、という話をしました。
算数シリーズは今回で3本目。
最後は、位取りと九九です。

本記事を読むことで、

通級で「位取り」と「九九」の指導を、どう進めればいいのか?

が分かります。

結論から言うと、私は位取りシートも、タイルも、九九表も使いません。
具体物の操作が大事、とかよく言われますけどね。
それは教室での算数科の授業で取り組めばいい。

私が使うのはプリントだけです。
通級ではとにかく時間がない。
限られた時間で、指導の効果をどう最大化させるのか。
これを突き詰めて考えて実践し続けた結果、私が使うのは「プリントだけ」なんです。

では、内容に入っていきましょう!

こんな実態があるなら、この指導を入れます

まず、位取りのつまずきから。

  • 「ごひゃくいち」と言われて、「5001」と書く
  • 「2095」を「にじゅうきゅうじゅうご」と読む
  • 「3+5」を「35」と答える
  • 「106−18」で、百の位から一の位に繰り下がる

次に、九九のつまずき。

  • 九九の唱えことばが覚えられない
  • 「4×7」を出すのに、「4×1、4×2⋯」と1からたどる
  • わり算になると、九九が出てこない

思い当たる子はいませんか?
「おいおい⋯なんでこんな間違いするんだ⋯?」って子😓

九九の原因は、聴覚的ワーキングメモリの弱さが主でしょう。
唱えことばは音なので、聴覚的ワーキングメモリが弱いと入りにくいですね。

使う教材は2つ

位取りと九九で、それぞれ違う教材を使います。

どちらも無料で手に入ります。
前回まで使ってきた算数支援ワークも、そのまま並行して続けます。

位取りシートは使いません

私は「位取りシート」のような具体物は使っていません。

ねこもみじ
ねこもみじ

なぜ使わないのか?
理由は、とっても単純です。

使わなくても、プリント教材で指導できるから。

プリントで完結する

教材工房のプリントのイメージはこんな感じ。

位取りプリントの再現図。数字→各位の個数、個数→数字、漢数字→数字と、3つの方向から位を扱う(実物ではありません)

解答する欄が明確ですね。
つまり、位取りシートを別に用意する必要がない。
プリント自体が、位取りシートの役割を果たしているわけです。

たとえば「174」を「100704」と書いてしまう子がいますよね。
百と書いて100、七十と書いて70、四と書いて4。
そのまま並べてしまう間違いです。

でも、位の部屋があるプリントなら、そもそもそう書けません。

それでもつまずいたら、手書きで部屋を作る

もちろん、迷う子はいます。
そういう時は、私が手書きで位の部屋を作って説明します。
一、十、百、千、の4つの部屋を作れば、基本的に位取りの説明ができます。

ねこもみじ
ねこもみじ

その場で作れるので、準備がいらないのが助かります☝️

九九表も使いません

九九についても同じです。
九九表の支援は効果的でしょう。
学級での支援として使っている先生も多いでしょう。

でも、通級では使っていません。
使う場面がないからです。

通級でやっているのは、九九を「使いながら問題を解く」ことではありません。
九九そのものを、使えるようにする指導です。
だから、これもプリントで指導できます。

スマイル式九九プリントは、認知特性で2つに分かれる

では、そのプリントの話をします。

スマイル式九九プリントの何がいいかというと、認知特性で2パターンに分かれていることです。

ちなみにこの教材、監修は小池敏英先生です。
九九が苦手になる背景の研究をもとに作られています。

パターンⅠ(視覚優位)

聴覚的記憶が弱い子向けです。
イラストによる支援が入っています。

硬貨のイラストで答えを引き出す作りになっていて、耳で覚えなくても進められます。

パターンⅡ(聴覚優位)

こちらは言葉による支援
ふりがなを読みながら反復する作りです。

九九プリントの2つの支援の違い(実物ではありません)

選び分けの指標は、WMI

では、どちらを選ぶのか。
私はWISCのWMI(ワーキングメモリー)で判断しています。

  • WMIが低いパターンⅠ(イラスト支援)
  • WMIが平均域、または個人内差で有意に低くない → パターンⅡ(ふりがな支援)

九九が覚えられない原因が聴覚的ワーキングメモリなら、耳に頼らない道を用意する。
単純な理屈です。

プリントは、段・問題数(3問/5問/9問)・順序(小さい順/大きい順/ランダム)・答えの有無まで選べます。
その子の理解の段階とつまずきの困難さに合わせて、内容を選んでいます。

なお、カレンダーやビンゴのような「お楽しみプリント」もありますが、私はほとんど使ったことがありません。
お楽しみプリントに2〜3分使うなら、算数の違うプリントを指導したり、違う指導パーツを組み込んだりしたいから。
そのくらい、通級での45分という限られた時間をどう有効活用するのか、真剣に考えているんです。

ゴールは「支援なしで答えられる」

この指導のゴールは、はっきりしています。

まず、位取りから。

位の部屋がなくても、数字を素早く正確に書ける・読める。

プリントには位の部屋があります。
私が手書きで部屋を作ることもあります。
でも、それはあくまで途中の支えです。

最終的には、部屋がない場面でも「174」が書ける。
「2095」が読める。
そこまで来て、位取りが身についたと言えます。

ここでも見ているのは「できるか」ではなく、「素早く正確か」ですね。

次に、九九です。

イラストもふりがなも薄数字もない状態で、書ける・答えられる。

支援つきで解けることが目標ではありません。
支援を外しても解けるようになって、はじめて九九が使える道具になります。

ひとつ、注意点を書いておきます。
サイトの仕様なのかバグなのか、「薄数字(答え)」で「なし」を選んでも、薄く答えが表示されることがあります。

ねこもみじ
ねこもみじ

これ、気づかずに使うと支援が外れていないままになります💦
印刷したら、一度自分の目で確かめてください。

バグが早く修正されてほしいっ‼️

変化のサイン

この指導=算数の指導パーツ、が効いてくるとこんな変化が見えてきます。

  • 位取りが、素早く正確にできるようになる
  • 九九が、支援なしで出てくるようになる
  • わり算で九九が使えるようになる(1からたどらなくなる)

ここでも見ているのは「できるか」ではなく「素早く正確か」です。
処理が速くなった=自動化されてきた、という手応えですね。

よくある質問(FAQ)

Q. 学級で九九表を使っているのに、通級で使わないのは矛盾しませんか?

矛盾しません。
役割が違うからです。

学級での九九表は、授業に参加するための支援です。
九九で止まって、その先の学習ができないのはもったいない。

通級でやっているのは、九九そのものを身につける指導です。
ここで表を見てしまうと、身につける機会がなくなります。

Q. 位取りのプリントは、1回に何枚やりますか?

内容によります。

位取りの複雑な内容なら、1枚の時もあります。
簡単な数概念の問題なら10枚やることもあるので、そこは大きく違いますね。

まとめ

  • 位取り=教材工房”なかお”、九九=スマイル式九九プリント
    どちらも無料
  • 位取りシートもタイルも使わない。
    プリントで完結するから。
    つまずいたら手書きで部屋を作る
  • 九九表も使わない。
    通級では使う場面がないから
  • 九九プリントはWMIで選び分ける
    低ければイラスト支援、平均域ならふりがな支援
  • ゴールは支援なしで書ける・答えられること

これで算数パーツは3本とも終わりです。
(と書きながら⋯あぁっ💦算数パーツの「文章題」もあることに気付いた笑)
いや〜、結構ボリュームあったわ〜笑
これでも伝えきれてない部分もあるんですけどね💦
文字だけだと、どうしても限界はあるなぁとは思います。
が‼️
私が伝えたい部分はある程度伝えられていると思います。

ねこもみじ
ねこもみじ

算数は、通級担当によって扱いが分かれるパーツだと思います。
この3本が、あなたの整理の材料になればうれしいです💪

短期的な成果=子どもの変容や学級適応、を求めないで。
通級ラボで紹介している指導内容・方法で、週1回の頻度なら約1年間指導する。
じゃあ、絶対子どもに変化出るから。
間違いないから笑

大丈夫!
一緒に頑張っていきましょう😊

📖 実際の指導編シリーズ

  1. ① 指導をひとつに絞らない理由と考え方
  2. ② 45分を“指導パーツ”で組み立てる
  3. ③ 「目の運動」対面トレ編
  4. ④ 「目の運動」プリント編
  5. ⑤ 「運動」体幹・バランスから体育へ
  6. ⑥ 「手の運動」巧緻性・運筆・道具操作
  7. ⑦ 「音読」たくさん読ませる前にやること
  8. ⑧ 「言葉のきまり」特殊音節の指導
  9. ⑨ 「文字(仮名)」平仮名・カタカナを書かせず覚える
  10. ⑩ 「読み取ろう(読解)」聞かれたことに端的に答える
  11. ⑪ 「作文」5W1Hで文章を組み立てる
  12. ⑫ 「漢字」①読み・意味編
  13. ⑬ 「漢字」②形・書き編
  14. ⑭ 「漢字」③使い分け編
  15. ⑮ 「意味調べ」教科書の知らない言葉を調べる
  16. ⑯ 「ことわざ・慣用句」教える/教えないの線引き
  17. ⑰ 「スピーチ」結論→理由→まとめで話す
  18. ⑱ 「気持ち・社会性」SSTと般化の話
  19. ⑲ 「気持ち」ワークシート1枚の進め方
  20. ⑳ 「気持ち」ワークシート②「どこが」と「なぜ」
  21. ㉑ 「気持ち」絵カード編(教材の話)
  22. ㉒ 「気持ち」絵カード3枚の進め方
  23. ㉓ 「おしゃべり」①ワークシート編
  24. ㉔ 「おしゃべり」②実会話編
  25. ㉕ 「言葉(語彙)」プリント3枚で語彙を増やす
  26. ㉖ 「言葉のイメージ」言葉と言葉をつないで概念を育てる
  27. ㉗ 「よく見よう」点つなぎで見る力を育てる
  28. ㉘ 「見て記憶」神経衰弱で見て覚える力を育てる
  29. ㉙ 「算数」①筆算は教えない。位取りと九九は教える
  30. ㉚ 「算数」②数概念|答えが合っていても、数え方を見る
  31. ㉛ 「算数」③位取りと九九|道具は使わない(この記事)

困りごとから探す(逆引き)WISC完全ガイド実際の指導編・完全ガイド

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