通級の「よく聞こう」指導|「聞く力が弱い」を4つに分ける【実際の指導編㉝】

実際の指導

こんにちは‼️
通級担当として、10年以上・のべ300人以上の指導歴がある「ねこもみじ」です🙂

前回の㉜「算数」指導④【文章題】で、算数の4本が終わりました。
算数の指導パーツ、意外と書くこと多かったわ〜笑
今回からは、また別の指導パーツに入ります。
「よく聞こう」です。
「聞く力」ですね☝️

本記事を読むことで、

通級で「よく聞こう」の指導を、どう進めればいいのか?

が分かります。

結論から言うと、「聞く力が弱い」を4つに分けます。
分けると、聞く力に対して通級で何を・どう指導したらいいかが明確になります。

どういうこと?????
というあなたの顔が浮かんできます笑
では、内容に入っていきましょう!

こんな実態があるなら、この指導を入れます

まず、どんな子に「よく聞こう」の指導パーツを入れるか。

  • 担任から「指示が通らない」「一斉指示で動けない」と言われる
  • 聞き返しが多い。「え?」「何て言った?」が口ぐせになっている
  • 検査の所見に「外の音に反応する」「注意は逸れやすく」などと書かれている
  • 聞きながら書く場面(板書・連絡帳・メモ)で、手が止まる

こういった実態が見られたら、「よく聞こう」の指導が必要かも?と考えます。
(※通級の45分間をどう組み立てるかは、②「45分を指導パーツで組み立てる」をご覧ください)

昔の私は、STEP1から順に出していました

この指導を始めたころ、私は教材の選び方が分かっていませんでした。
当然ですよね。
だって、通級担当なんて役割、やったことないんだから。
それに、通級担当の仕事内容は学級担任と全然違うんだから。
これは、あなたも分かるでしょう?
以前にも紹介しましたが、改めて教材を紹介しておきます。

当時やっていたのは、こんな感じ。

ステップ1からやる。
レベルが低めだろうな、と思ったワークからやる。

それだけ。
目の前の子に何が足りないかではなく、教材の順番で決めていました。

ねこもみじ
ねこもみじ

つまり「とりあえず最初から」ですね。
経験がないとはいえ、今思うとかなり雑でした💦
教材で指導内容を決める。
やったらあかんやつですね⋯。

もちろん、これでも子どもは取り組みます。
取り組んでくれます、という表現の方が妥当でしょうね。
でも、その子の困難さに的確に指導できているかと問われると、全く自信がない。
手応えのないまま、次のページに進んでいました。

そんな私が変わっていったきっかけは、「注意」を4つに分けて見るようになってからです。

注意は4つ。それに「記憶」を足して見ます

注意には種類があります。
選択・持続・配分・転導の4つです。

この4つの意味は、WMI編②【数唱】で詳しく書きました。
ここでは一言ずつだけ。

  • 選択… どれに注目するかを選ぶ
  • 持続… 注目し続ける
  • 配分… 「ながら」で注意を分ける
  • 転導… 注目先を切り替える

一般的にはとか、先生方はこれら4つまとめて「集中力」と呼ぶことが多いですね。
でも、専門的には集中力は「注意の力」です。
そして、その注意の力は「4つ」に分けられるんですね💡

で、ここからが今回の話です。
私はこの4つに、もうひとつ足して教材を見ています。

その前に。配分と転導の見分けが、いちばん難しい

4つのうち、私がずっと迷っていたのが配分と転導です。
どちらも「2つ以上のことに注意を向ける」から、教材を見ても線が引けない。

で、10年以上試行錯誤し続けて、たどり着いた自分の中の基準はこれ。

手を動かして作業する → 配分
頭の中で思考や注意を切り替える → 転導

聞きながら地図をたどる、聞きながらメモを書く。
手が動いていたら配分です。
「くるま」から「る」を抜いて言う、2つのお話を聞き比べる。
手は止まっているのに頭の中が忙しかったら転導です。

ねこもみじ
ねこもみじ

この線引きは、完全に「私の基準」です。
だから、根拠とかなくて主観なんだけど⋯。
通級で実際に指導する時に活かせる基準ではあると思います。

そして、「記憶」を足しています

もうひとつ。
聞き取りの教材をやっていると、注意だけでは説明がつかない課題が出てきます。

たとえば「数分間のお話を聞いた後、質問に答える」。
もちろん、選択も持続も入ってはいるけれど、メインではない。
覚えて、出す力ですね。

記憶は、注意ではありません。
ワーキングメモリー、つまり別の力です。
でも「よく聞こう」の指導は、記憶を外すと半分が説明できなくなる。
だから私は、4つの注意に「記憶」を並べた5つで教材を見ています。

注意の4つ(選択・持続・配分・転導)+記憶。
この5つの視点
で、教材の内容を分解しています。

私が使っている、5つの見分け方

では、目の前の1枚がどれなのか。
私はこう見分けています。

見るところどういう課題かどれ
順番聞き終わってから答える。少し長めの指示を聞く記憶
手は止まっているが、頭の中で組み替える・切り替える転導
聞きながら手を動かす(書く・置く・線を引く)配分
選択と同じくらいの段階で、問題数が多い・長く続く持続
段階そもそも音や言葉に注意を向けるところから選択

この5つには、難しさの順番があります

「よく聞こう」で指導したい5つ力は、横並びではありません。
私の中では、こういう順で難しくなっていきます。

選択 → 持続 → 配分と転導 → 記憶

まず、音や言葉に注意を向けられる(選択)。
それを続けられる(持続)。
そのうえで、手を動かしながら頭を切り替えながら聞ける(配分・転導)。
最後に、聞き終わってから答えられる(記憶)。

選択・持続がある程度できていないと、配分・転導・記憶の課題は難しい場合が多いです。

ただ、きれいな階段ではありません。
きれいに線引きはできない。
重なりながら、関連しあいながら高めていくイメージです。

使っている教材、全77ワークを分けてみました

私が「よく聞こう」で使っている教材は、この2つです。

  • 聞きとりワークシート(LD発達相談センターかながわ 編/かもがわ出版)全3巻
  • きくきくドリル(村上裕成・和田秀樹/文英堂・シグマベスト)STEP1〜3

先ほど紹介した教材ですね。
この6冊に載っているワークの1つ1つが、5つの力にどう対応しているのか。
全部数えてみました笑
(たぶん)77個ありました。
だいぶしんどかったわ🤣

その77個を、さっきの5つの力に当てはめてみました。
全部並べると読みにくいので、教材ごとの傾向から見てください。

教材ごとに、狙っている力がちがう

教材いちばん多い力ワーク数
きくきくSTEP1持続7・選択5(記憶3)9
きくきくSTEP2記憶5・持続2・転導28
きくきくSTEP3転導10・配分7・記憶712
ワークシート①配分9・持続7・転導518
ワークシート②配分14・転導1116
ワークシート③転導13・記憶1314

数えてみて、いちばん驚いたのがここです。

ワークの難易度が上がると、指導したい注意の力の難易度も上がる。

当たり前と言われたら当たり前なのかもしれないけど⋯。
こういった気付きも、実際に指導し続けているから分かることだし、何より「5つの力」に分けられているから気付けることですよね。
教材を選ぶことが、そのまま「どの力を狙うか」を選ぶことになります💡

たとえば、こんなふうに分かれます

全部は載せられないので、分かりやすいものを抜き出します。

ワークどんな課題かどれ
どちらの おと でしょう
(きくきくSTEP1)
2つの音を聞いて、どちらか答える選択
あてはまる ものは なに
(STEP1)
聞いた条件に合うものを選ぶ。問題数が多い持続
どっちへ すすむ
(STEP2)
道順を聞いて、地図の上を指でたどる配分
ぬきぬきことば
(ワークシート①)
「くるま」から「る」を抜いて言う。手は動かない転導・記憶
お話のどこがちがう
(STEP3)
2つのお話を聞き比べて違いを見つける転導・記憶
メモをとろう
(STEP3)
聞きながらメモを書き、要点も選ぶ配分・転導・記憶
お話をおぼえよう
(STEP2)
お話を聞いて、聞き終わってから答える記憶

「ワークの順番通りに指導していこうかな〜」と思っていたあなた。
5つの力を意識して、ワークと向き合ってみてください。
「よく聞こう」の指導パーツで、目の前のその子のどんな力を高めたいのか、明確になってきますよ🙂

分けてみて、分かったこと

今回、自分で分けてみて、初めて見えたことが2つありました。

① いちばん多いのは「転導」だった

77個の内訳です(1つのワークが複数にまたがるので、合計は77を超えます)。

どれのべ件数割合
転導4153%
記憶3647%
配分3242%
持続1722%
選択79%

半分以上のワークに転導が入っていました。
手は止まっているのに、頭の中で切り替えている。

「よく聞こう」の教材って、座って静かにやっている時間がほとんどです。
だから外から見ると、何もしていないように見える。
でも中身は、いちばん忙しい力を使っていました。

これはとっても良いですよね‼️
なぜか?
「学級ですごく求められる力」だからです。
やっぱり、良い教材ですよね〜✨️

② 転導だけの課題は、1つもなかった

転導は41個ありましたが、そのすべてが配分か記憶とセットでした。

内訳はこうです。

  • 転導・記憶 23個(聞いて、頭で組み替えて、答える)
  • 配分・転導 16個(手を動かしながら、頭も切り替える)
  • 配分・転導・記憶 2個

持続も同じで、持続だけの課題は4個しかありませんでした。

つまり「切り替えが苦手な子に、切り替えの練習をさせる」という教材の選び方ができないということなんじゃないかな。
そうやって指導し続けていくことで、総合的に「注意の力」を高められるのではないかと思います。

おまけ:教材の並び順が、そのまま階段になっていた

さっきの「選択→持続→配分と転導→記憶」の順で、77個を並べ直してみました。
そして、選択1点、持続2点、配分と転導3点、記憶4点にして、カウントしてみました。
マニアックですね笑
すると、こうなりました。

教材難しさ(平均)
きくきくSTEP1(4〜8歳)1.9
ワークシート①2.8
ワークシート②3.0
きくきくSTEP2(5〜10歳)3.2
きくきくSTEP3(6〜12歳)3.4
ワークシート③3.5

きくきくドリルはSTEP1→2→3で、ワークシートは①→②→③で、きれいに上がっていきました。
教材のどのプリントから指導していくか、を考える時に参考にできるかと思います☝️

検査で見えるのは、「記憶」だけです

ここ、私も長いこと誤解していました。

WISCのWMI(ワーキングメモリー)で測っているのは、数唱や絵のスパンです。
つまり聞いて覚える力=記憶。
これは、さっきの5つのうちの1つです。

では、残りの選択・持続・配分・転導は?

検査には出てきません。
なので、数値では見えません。

だから「WMIが低い=聞く力が弱い」で止めると、選択や持続を見落とします。
さっき数えたとおり、いちばん多かった転導も、数値には出ません。

ただし、所見の文章にはヒントがあります

数値には出ませんが、検査中の様子を書いた所見には出ます。
私が見ているのは、こういう記述です。

  • 「課題に取り組む途中で、そわそわしていました
  • 外の音に反応する様子が見られました」
  • 注意は逸れやすく

検査中の行動を手がかりにするんですね。
(※インフォーマルアセスメント、と言われますね)

集められる情報は頑張って集めて、目の前のその子に最適な難易度だと思われる内容を用意しています。
とは言っても、1回でピタッとハマらないこともしばしばです💦
そんな時は、修正して、試行錯誤です。

よくある質問(FAQ)

Q. 教材がなくても、この分け方は使えますか?

はい、使えます。
市販教材でなくても、一斉指示そのものが分類できます。
「教科書を出して、25ページを開いて、鉛筆を持ちます」は、聞き終わってから動くので記憶
「板書を写しながら先生の話も聞く」場面は配分
「話を聞く→ノートを見る→また話を聞く」と行き来する場面は転導
こんな感じです。

Q. 分類が合っているか、自信がありません

大丈夫です。
合っているかどうかは、あまり重要ではありません。

正直に書くと、私も77個を分ける途中で3回やり直しました。
「配分だと思っていたけど、手は動いてないな」「これは転導も入るな」と、行ったり来たり。
4つの注意は重なったり、関連し合ったりしている力なので、明確に線引きできるものではありません。

大事なのは、「この1枚は何を要求しているんだろう」と考えてから出すことです。
合っているのか=正解を求める姿勢は、通級担当にあまり向いていない・重要ではないと私は思います。

Q. 何年生向けですか?

学年では決めていません。
ただ、選択・持続の段階からになる子は、低学年やWMIがかなり低い子に多いという印象はあります。
そういう子には、きくきくドリルSTEP1から入ります。
最終的には、いーーーーーーーーっつも言っていますが、その子の実態によります。

まとめ

  • 「聞く力が弱い」を、注意の4つ(選択・持続・配分・転導)+記憶で見る
  • 手を動かす=配分/頭の中で切り替える=転導
    この線引きがいちばん難しかった
  • 手持ちの教材77個を分けたら、いちばん多いのは転導(41個)
    転導だけの課題は1つもなかった
  • 検査で見えるのは記憶だけ。
    選択・持続・配分・転導は、所見や実際の行動観察から情報を集める
  • 教材を選ぶこと=狙う力を選ぶこと。
    選択・持続を狙えるのは、きくきくSTEP1

今回の内容もボリューム多くなってしまいましたわ〜笑
今回の記事、すごい時間かかったんですよ、実は💦
内容を削って、削って、足して、削って、削って⋯と何度も作業しましたが、多くなってしまった!
ちょっとでも、通級担当であるあなたの役に立てば嬉しいです✨️

「よく聞こう」の指導パーツを、45分の中で他のどの指導パーツと組み合わせていくかについては、実際の指導編・完全ガイドに全体像をまとめています。

大丈夫!
まずは手元の1枚を見て、「これは手を動かす課題かな、頭で切り替える課題かな」と向き合う・考えることから始めてみてください。
一緒に頑張っていきましょう😊

📖 実際の指導編シリーズ

  1. ① 指導をひとつに絞らない理由と考え方
  2. ② 45分を“指導パーツ”で組み立てる
  3. ③ 「目の運動」対面トレ編
  4. ④ 「目の運動」プリント編
  5. ⑤ 「運動」体幹・バランスから体育へ
  6. ⑥ 「手の運動」巧緻性・運筆・道具操作
  7. ⑦ 「音読」たくさん読ませる前にやること
  8. ⑧ 「言葉のきまり」特殊音節の指導
  9. ⑨ 「文字(仮名)」平仮名・カタカナを書かせず覚える
  10. ⑩ 「読み取ろう(読解)」聞かれたことに端的に答える
  11. ⑪ 「作文」5W1Hで文章を組み立てる
  12. ⑫ 「漢字」①読み・意味編
  13. ⑬ 「漢字」②形・書き編
  14. ⑭ 「漢字」③使い分け編
  15. ⑮ 「意味調べ」教科書の知らない言葉を調べる
  16. ⑯ 「ことわざ・慣用句」教える/教えないの線引き
  17. ⑰ 「スピーチ」結論→理由→まとめで話す
  18. ⑱ 「気持ち・社会性」SSTと般化の話
  19. ⑲ 「気持ち」ワークシート1枚の進め方
  20. ⑳ 「気持ち」ワークシート②「どこが」と「なぜ」
  21. ㉑ 「気持ち」絵カード編(教材の話)
  22. ㉒ 「気持ち」絵カード3枚の進め方
  23. ㉓ 「おしゃべり」①ワークシート編
  24. ㉔ 「おしゃべり」②実会話編
  25. ㉕ 「言葉(語彙)」プリント3枚で語彙を増やす
  26. ㉖ 「言葉のイメージ」言葉と言葉をつないで概念を育てる
  27. ㉗ 「よく見よう」点つなぎで見る力を育てる
  28. ㉘ 「見て記憶」神経衰弱で見て覚える力を育てる
  29. ㉙ 「算数」①筆算は教えない。位取りと九九は教える
  30. ㉚ 「算数」②数概念|答えが合っていても、数え方を見る
  31. ㉛ 「算数」③位取りと九九|道具は使わない
  32. ㉜ 「算数」④文章題|絵の上手下手は見ない
  33. ㉝ 「よく聞こう」聞く力を4つに分けて教材を選ぶ(この記事)

困りごとから探す(逆引き)WISC完全ガイド実際の指導編・完全ガイド

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